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MotionBoard / Tableau / Power BI を比較!現場フィット力で見るBIツールのリアル

2025年5月7日

はじめまして!オルトロボのBI担当のMです。
今回は、MotionBoard / Tableau / Power BI の3大BIツールを、実際に導入&開発に携わったエンジニアの視点から 「現場フィット」 という独自の切り口で徹底比較します。
単なるスペック論争ではなく、実践的な導入判断に役立つ洞察をお届けします。

1. なぜBIツールは現場で使われないのか?

デジタル時代のデータ活用において、BIツールの選択は企業の戦略的意思決定を左右する重要な判断です。しかし、多くの企業は華やかな機能や価格比較に目を奪われ、「実際の現場で誰がどう活用するのか」という本質を見落としがちです。

いくら高機能なBIツールでも、それを使いこなす現場とのギャップがあると本来の価値を発揮できません。実際の導入プロジェクトでは、次のような悩みをよく耳にします。

  • 高機能なダッシュボードが作れても、実務ではまったく使われていない
  • データ整備に時間がかかりすぎて、本来の分析作業が進まない
  • 操作が難しくて、現場では結局Excelに逆戻り
  • 導入部門と現場のニーズが噛み合っていない

こうしたすれ違いの背景には、導入を主導するシステム部門や企画部門が現場の業務フローやITリテラシーを正確に把握しきれないまま、製品選定を進めてしまう構図があります。一方で、現場の意見もばらつきがあり、ツールの仕様を正しくイメージできていないため「ある程度は導入側で決めざるを得ない」という事情もあります。

このような現実を前に、「どうすれば現場で本当に使われるBIツールを選び、運用できるのか」という視点を持つ必要があります。


機能や価格の比較だけでなく、実際に現場で長期的に活用されるかどうか。これがBIツール選定における最重要ポイントです。

ビジネス環境の変化が加速する現代では、一度作ったレポートやダッシュボードが長期間そのまま使われることはほとんどありません。「見たい指標が変わった」「担当者が入れ替わった」「別部署でも使いたい」など、様々な理由で定期的なメンテナンスや再設計が求められます。その時、現場で自走できるか・ツールが柔軟に対応できるかが、持続的な運用の成否を大きく左右します。

2. MotionBoard / Tableau / Power BI の現場フィット比較表

以下に、代表的な観点での3つのツールを比較してみます。

  • 上記比較表は、MotionBoard、Tableau、Power BIを比較した場合の評価です。
  • 各製品の費用は、導入規模、カスタマイズの範囲、オプション機能の追加などにより大きく変動します。実際の導入検討時には、各ベンダーに詳細な見積もりを依頼することをお勧めします。
  • 利用可能な機能は、ライセンスの種類やオプション契約の内容によって異なります。

3. 実際の導入・運用で感じた “フィットする場面” の違い

カタログスペックや比較表では見えない、使って初めてわかる相性の良し悪し。
ここでは、各ツールが特に力を発揮する場面について解説します。

MotionBoard:日本企業の業務スタイルに最適化

  • 定型帳票作成に高い親和性
  • 既存の業務プロセスへの統合のしやすさ
  • GUIベースで構成できるが、柔軟なレポート構築にはある程度の技術的視点も必要

Tableau:分析志向のチームでこそ本領発揮

  • データの多角的分析と高度な可視化機能により、専門分析チームの生産性向上
  • Tableau Prepの活用で、GUIで柔軟な前処理が可能
  • 初学者にはやや難しく感じることもあるため、教育設計も重要

Power BI:Microsoft環境との親和性が最大の強み

  • Excel/Teams/SharePointとのシームレスな連携が魅力
  • 小規模から始められる導入のしやすさ
  • 大規模展開時には、データモデリングや管理設計の専門知識が求められる

ポイントは、「どれが万能か」ではなく「どのツールが自社環境に適合するか」です。業務内容やユーザー層によって、最適な選択肢は自然と変わってきます。

また、1つのツールで全てのニーズを満たすのは簡単ではありません。
定型レポートと探索型分析、現場と管理部門、IT部門と非IT部門など、目的やユーザー特性に応じて、“使い分け”や“併用”という選択が効果的な場合も少なくありません。

4. 一本化にこだわらない、複数ツール併用という戦略

実際のBI活用現場では、「1つのBIツールに絞るのではなく、複数ツールを使い分ける」という選択をされる企業も見受けられます。
これまで支援してきた企業で見られた併用パターンをご紹介します。

■MotionBoard × Tableau

目的:現場の定型業務と、本部の探索型分析を両立

  • 現場ではMotionBoardで日々の帳票出力をスムーズに。
  • 本部ではTableauで複数データを横断しながら分析・レポート。

➡️ 帳票文化や運用ルールを維持しながら、分析力を強化したい企業に適した構成。

■ Power BI × MotionBoard

目的:全社標準化と、現場ニーズの両立

  • 全社共通のダッシュボードやKPI可視化は、Microsoft環境と親和性の高いPower BIで展開。
  • 現場では、帳票文化や定型フォーマットへの対応力を活かし、MotionBoardで帳票出力。

➡️ 「標準化」と「業務運用」のギャップを埋めるために、併用という選択をしたケース。

■ Tableau × Power BI

目的:専門的なデータ分析と、全社的な情報共有の両立

  • 分析部門では、Tableauで複雑なデータを多角的に可視化し、インサイトを抽出。
  • 経営層や一般部門では、Power BIを使って分析結果をダッシュボード化し、Microsoft製品と連携しながら展開。

➡️ 専門チームによる深堀分析と、全社への情報浸透を分担したい企業に適した構成。


複数ツール併用は理想的な運用を実現しやすくなる一方で、一方で以下のような課題もあります

1. コスト面の課題

  • 複数のライセンス費用が発生するため、総コストが増加
  • 各ツールのサポート契約や更新管理の手間
  • ユーザートレーニングや教育コストの増加

2. データガバナンスの課題

  • 複数ツール間でのデータ定義や計算ロジックの不一致リスク
  • 同じデータを別々に加工することによる整合性の問題
  • セキュリティポリシーやアクセス権限の複雑化

3. 運用維持の課題

  • 各ツールのバージョンアップ対応や互換性確認の負担
  • 技術スキルの分散と専門知識の維持
  • 部門間のサイロ化を促進するリスク

対策のポイント

  • データソースと定義の一元管理(データマート/DWHの整備)
  • 全社横断のBIガバナンス体制の構築
  • 明確な役割分担と使用基準の策定
  • 定期的な情報共有の場の設定

こうした併用の選択肢は、導入背景や組織構造、部門ごとの業務特性によって変わります。

だからこそ、「万能な一本」を見つけることにこだわるよりも、それぞれのツールの特性を理解し、必要に応じて併用するという柔軟な発想も含めて、自社にフィットする形を模索する視点が、現場に寄り添ったBI活用には重要なのかもしれません。

5. 現場フィットから始める、最適なBIツール活用

ここまで見てきたように、 MotionBoard、Tableau、Power BI は、いずれも素晴らしいツールですが、それぞれ得意とする用途や、現場での活用シーンが異なります。
何度も言いますが、大切なのはスペックの比較で優劣をつけることではなく、自社の現場にどれだけフィットするかを見極めること。これが、成功するBI活用の出発点となります。


選定時に意外と見落とされがちな、以下の3つの視点は、BI活用の成否に直結します。

  1. ユーザー視点(使いやすさ・定着性)
    •  ITリテラシーに関わらず、現場メンバーが主体的に活用できるか。
       
  2. 業務視点(目的とワークフローへの適合)
    •  定型レポートか探索型分析か、部門内利用か全社展開か。用途に応じた柔軟性があるか。
       
  3. 組織視点(データ基盤との相性・ガバナンス)
    •  既存のシステムやデータ構造との統合のしやすさ、セキュリティと運用管理の容易さ。

さらに、 「現場の困りごとから逆算できているか」「誰がどのくらい使いこなす想定か」「今の自社の成熟度やステージに合っているか」といった視点も、見落としてはならない重要な観点です。ツール自体の比較に終始するのではなく、現場に根づく活用を逆算して考えることが、BI導入を成功に導く鍵となります。


現場業務は多様で、一つのツールですべてのニーズを満たすのは簡単ではありません。そのため、前の章で紹介したように状況に応じて複数ツールを使い分けるアプローチには一定の合理性があります。

とは言え、現実には最初から複数ツールの導入に踏み切れる企業は多くありません。

「そもそも1つ導入するだけでもハードルが高い」「まずは失敗しない一手を打ちたい」そんな企業の方が、むしろ多数派ではないでしょうか。だからこそ、あれもこれも…と欲張るのではなく、現場の課題やリテラシー、データ基盤の整備状況などを踏まえて、無理なく取り組める“最初の一手”を選ぶことが大切です。

最初に選ぶBIツールが、今の自社にとってちょうどよく、現場に自然に根づくこと。その実感こそが、継続的な活用や将来の拡張に向けた土台になります。

将来的に複数ツールの併用や高度な分析環境を目指すかどうかは、導入後の定着や成果を見ながら判断すれば十分。 まずは、「現場に寄り添う一歩目をどう選ぶか」が、BI活用を着実に前進させるための確かな基盤になります。

6. さいごに

BIツールは、導入しただけで業務が改善する魔法のツールではありません。
自社の業務課題を見つめ、現場の声に耳を傾け、組織文化に自然とフィットするツール/活用方法を選び取ることが、継続的に価値を生み出すBI運用への第一歩です。

多くの組織が経験する「導入後の落胆」や「こんなはずじゃなかった」というギャップを防ぐためには、実際の業務プロセスとの相性を丁寧に検証することが不可欠です。便利な機能や将来的な拡張性に目を奪われるのではなく、まずは現場が日々直面している課題解決に確実に貢献できるツールを選ぶことが、長期的な成功への近道となります。

本記事が、「現場フィット力」を軸に、自社にとって“本当に使えるBI”を見極めるヒントになれば幸いです。

当社では、BI導入前のフィット診断から、導入支援・運用設計・複数ツールの活用支援まで、現場視点に立った伴走型の支援を提供しています。
ご興味のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。