BIツール導入の流れと成功のポイントを解説!
2025年7月25日
こんにちは!オルトロボで CRM・BIツールの導入支援を担当しているMです。
今回はBIツールの導入について、計画から運用開始まで実際にどう進めているか、お話しします。
BIツール導入は、単にシステムを入れるだけではありません。データを活用した意思決定の文化(データドリブン文化)を会社に作っていく、大きなプロジェクトと考える必要があります。
成功させるには、IT部門だけでなく、実際に使うビジネス部門の方々にも参加してもらうことが重要になります。
導入は、大きく以下4つのフェーズに分かれます。
各フェーズでのポイントと注意点を、実体験も交えてご紹介します。
目次
0. その前に…データドリブンって何?
売上データやマーケティングデータ、Web解析などを活用して判断・行動する手法。
顧客の行動や価値観が多様化し、勘や経験だけでは判断が難しくなってきたため。
元々は顧客との接点が限られていたが、現在はSNS・Web広告・口コミなど、接点が増加&複雑化。
主観ではなく、「データ=事実」をもとにした正確な意思決定が求められており、「データドリブン」が重要に。
データドリブンとは、売上データやマーケティングデータ、Web解析データなどを活用して判断・行動していくことです。なぜ今、この考え方が注目されているのかというと、顧客の価値観や行動が多様化し、従来の経験や勘だけでは判断が難しくなってきたからです。
以前であれば、来店した顧客が何を見て来たのか、何が目的なのかを、ある程度経験で把握できたシーンもありました。これは、新聞の折込チラシやDM、テレビCMなど、お客様との接点が限られていたためです。
しかし現在は、インターネットとスマートフォンの普及により状況が大きく変わりました。Web広告、口コミサイト、メールマガジン、SNSなど、顧客との接点は無数に存在し、それに伴って情報量も膨大になっています。このような環境で経験や勘だけに頼ることは、リスクが高くなっています。
さらに、お客様のニーズも多様化しています。情報と選択肢が増えた結果、お客様が何を求めて店舗やWebサイトを訪れたのか、把握することが以前より難しくなっているのです。
こうした状況の中で注目されているのがデータです。データは主観ではなく事実を示すものなので、これを基に判断すれば、より正確な経営判断ができるようになり、変化の激しい市場にも対応しやすくなると考えられるようになりました。
このような背景から、データドリブンという考え方に注目が集まってきたのです。

1.BIツール導入前の計画
1-1. 明確なビジネス課題とゴールの設定
さて、BIツールを導入するときは、まず「なぜ必要なのか」をはっきりさせることから始めます。
「とりあえずBIツールを入れれば何とかなる」
課題が不明確だと、導入後に「結局何に使えばいいか分からない」という事態になりがちです。
単に「データを見える化したい」ではなく、以下のように、具体的にどんな課題を解決したいのかを明確にしていきます。
課題の例:
- 営業会議で、地域別・担当者別の販売状況を議論するのに時間がかかりすぎている
- 顧客の離脱傾向を早期に発見できず、対応が後手に回っている
- 在庫管理の意思決定が経験則に頼りすぎており、過剰在庫と欠品が頻発している
こうした具体的な課題を言語化することで、BIツールに何を求めるかがはっきりします。
1-2. 測定可能なゴールの設定
課題が明確になったら、BIツール導入後に達成したい具体的な目標を設定します。
効果的な目標には、以下のような共通点があります。
◆具体的で測定可能であること
例:「週次営業会議の準備時間を、現在の4時間から1時間以内に短縮する」
◆期限が明確であること
例:「3ヶ月以内に、在庫回転率を20%改善する」
こうした目標設定をすることで、導入効果を測定しやすくなり、プロジェクト全体の方向性も定まります。
<注意点>
目標は現実的なものにしましょう。「すべての業務を効率化したい」のような大きすぎる目標は、プロジェクトが迷走する原因になってしまうためです。
.
1-3. 具体的な要求の把握
BIツール導入で最も重要なのが、具体的な要求仕様の作成です。
ここで失敗すると、後で大きな手戻りが発生してしまいます。
要求仕様は必ず現場の方と一緒に作成してください。
IT部門だけで作ると、実際の業務とかけ離れたものになってしまいます。
①ユーザーの声を集める
まずは、実際に使う人の視点からニーズを集めていきます。
重要なポイントを押さえるために、「○○の立場として、△△したい。なぜなら□□だから」というフォーマットで聞き取りましょう。
-
・営業マネージャーとして、私は朝のミーティング前に各担当の前日の商談状況を確認したい。
なぜなら、サポートが必要なメンバーを素早く特定したいからだ。 -
・マーケティング担当として、私はキャンペーンの反応率を地域別・年齢層別に分析したい。
なぜなら、次回のターゲティングを最適化したいからだ。
②必要なデータを洗い出す
各ユーザーの要望を実現するために必要なデータ項目を、具体的にリストアップしていきます。
- データ項目名(例:商談名、顧客名、金額、状況、担当者名など)
- 更新頻度(リアルタイム、日次、週次など)
- データソース(顧客管理システム、会計システム、Excelシートなど)
- 必要な計算・集計方法(合計、平均、前年同月比など)
.
1-4.現状のデータの把握
以下のポイントでデータの現状を把握していきます。
- どんなデータがあるか
- どの環境にあるか
- どんな粒度か
- 複数リソースになる場合、結合することは可能か
- データの品質はどうか
「データはあるけれど、実は(簡単には)使えない」というケースに陥ることがあります。
例えば、顧客データが部署ごとに異なる形式で管理されていて、統合が困難な場合などです。
後の作業のためにも、データの利用ハードルを事前に確認しておきましょう。
.
2. BIツールの選定
準備が整ったら、いよいよツール選定です。現在は多くのBIツールがあり、それぞれに特徴があります。
ツールを選定する際は、主に以下の点を確認していきます。
- 使いやすさ:実際に使う現場の方が操作できるか
- コスト:ライセンス費用だけでなく、導入・運用コストも含めて検討
- 機能:作成したい分析・レポートが実現できるか
- 拡張性:将来的な利用拡大に対応できるか
要求仕様をもとに候補ツールを絞り込み、実際にデモや試用版で検証していきます。
この際、必ず現場の方にも触ってもらい、使い勝手を確認してもらうことが重要です。
詳細なツール比較や選定方法については、弊社の別記事で詳しく解説していますので、そちらもご参照ください。
🔗MotionBoard / Tableau / Power BI を比較!現場フィット力で見るBIツールのリアル
3. 構築・初期展開
3-1. 段階的な導入計画
ツールが決まったら、いきなり全社展開するのではなく、段階的な展開をお勧めします。
パイロット導入のメリット
パイロット導入では、影響範囲を限定することで、問題が発生しても対処しやすくなります。また、成功体験を作ることで、他部門への展開時の抵抗感を減らせます。
パイロット部門の選出
パイロット部門の選び方も重要です。理想的なのは、データ活用に前向きで、かつ他部門への影響力があるメンバーがいる部門です。営業部門や管理部門がよく選ばれます。
段階的展開の具体例
上記を踏まえた、ある会社での例を挙げます。
第1段階:
営業部門で日次売上レポートの自動化から始めました。従来Excel作業に2時間かかっていたものが5分で完了するようになりました。
第2段階:
第1段階の明確な成果を成功事例として他部門に説明する場を設けました。
実際に成果を体感したパイロット部門のメンバーにも説明してもらうことで、他部門への説得力が増しました。
この説明会を経て、データ活用に前向きとなった部門で次の導入を行いました。
第3段階:
第1段階・第2段階の動きを全社的に発信していたことで、他部門のBIツール導入意欲も全体的に高まっていたため、挙手制で逐次利用部門を拡大しました。
3-2. 使用するデータの整備
元になるデータがよほどシンプルでない限り、実際の導入作業で最も時間がかかるのがデータの準備です。
データの抽出・変換・統合
複数のシステムからデータを取得し、BIツールで利用できる形に変換します。例えば、顧客管理システムには「顧客ID、顧客名、業種」が、販売管理システムには「注文ID、顧客ID、売上金額、売上日」が別々に保存されています。これらを顧客IDをキーとして結合し、1つのテーブルにまとめることで、「どの業種の顧客が、いつ、いくら購入したか」を一目で分析できるようになります。
データ品質の改善
実際のデータには様々な問題があります。重複したレコード、入力ミスによる異常値、欠損値などです。これらを自動的に検出・修正する仕組みを作ります。
<よくあるつまづきポイント>
「思っていたより汚いデータが多い」というのは、ほとんどのプロジェクトで発生する問題です。例えば、同じ顧客が「株式会社ABC」「(株)ABC」「ABC」など複数の表記で登録されているケースです。
「システム間でデータの定義が違う」という問題もよくあります。営業システムでは「受注日」、会計システムでは「売上計上日」など、同じような項目でも意味が異なる場合があります。
これらの問題は事前の調査である程度予測できますが、実際に作業を始めてから発覚することも多いため、スケジュールには余裕を持たせておくことが重要です。
データの定期更新の仕組み構築
手動でデータを更新していては継続的な運用は困難です。日次・週次・月次など、適切な頻度でデータが自動更新される仕組みを作ります。
3-3. ダッシュボードの構築
前項で整備したデータとBIツールを用いて、ダッシュボードの作成(データの可視化)を行います。
<注意点>
最初から完璧を求めすぎないことです。
「80%の完成度で運用開始し、使いながら改善していく」という姿勢が成功の鍵になります。
3-4. ユーザー研修とサポート体制
技術的な導入が完了しても、使ってもらえなければ意味がありません。
しかし、多くの企業で「ツールは導入したが、現場で活用されない」という問題が発生しています。
このギャップを埋めるには「現場がツールを使いこなせる状態」を作ることが重要ですので、研修やサポート体制に工夫をしましょう。
よくある研修の問題点
研修では、以下のような問題がよく見られます。
- ・機能説明に終始し、実際の業務での使い方がわからない
- ・大人数での一方的な説明で、個別の質問に対応できない
- ・一度の研修ですべてを教えようとして、結局何も覚えられない
- ・研修後のフォローアップがなく、疑問が解決されないまま使われなくなる
こうした問題を避けるため、以下のような体制や進め方をお勧めします。
効果的な研修の進め方
一度にすべてを教えようとすると、ユーザーは覚えきれずに挫折してしまいます。まずは基本操作から始めて、徐々に高度な機能を扱えるようにしましょう。
効果的な研修のプログラム
サンプルデータではなく、実際の業務データを使った研修が効果的です。「自分の担当エリアの売上を確認してみましょう」といった具合に、すぐに業務で使える内容にします。
少人数制のメリット 大人数での研修では質問しにくい雰囲気になりがちです。5-6人程度の少人数で実施し、一人ひとりの理解度を確認しながら進めます。
研修を受けたとしても、実際の業務の中でツールを活用していくと、不明点や戸惑いが生じる場面も少なくありません。そのため、利用者が安心してツールを使いこなせるよう、継続的なサポート体制の整備が不可欠です。
ヘルプデスク機能
導入初期は特に、気軽に質問できる窓口が重要です。メールや社内チャットツールなどを活用して、迅速に回答できる体制を整備します。
マニュアルと FAQ の整備
よくある質問は FAQ としてまとめ、誰でもアクセスできる場所に配置します。動画マニュアルも効果的で、操作手順を視覚的に理解できます。
社内勉強会の開催
月1回程度の勉強会を開催し、新機能の紹介や活用事例の共有を行います。ユーザー同士の情報交換の場としても機能します。
推進担当者の役割
各部門に1-2名の推進担当者を配置し、日常的な質問対応や活用促進を担ってもらいます。IT部門だけでは現場の細かいニーズに対応しきれないためです。
4. 運用
BIツールの導入後は定期的に以下を行い、データ活用の効果を最大化しましょう。
効果測定
導入時に設定した目標に対して、定期的に効果を測定します。「営業会議の準備時間が4時間から1時間に短縮された」「在庫回転率が15%改善した」など、具体的な数値で成果を確認します。
効果が出ていない場合は、なぜうまくいかないのかを調べます。ツールの機能が足りないのか、使い方に慣れていないのか、データに問題があるのか。原因によって対処方法が変わります。
改善活動
ユーザーからの要望や困りごとを定期的に聞き取り、システムの改善につなげます。「こんなレポートがあったら便利」「この機能の使い方がわからない」といった声を集める仕組みが必要です。
新しい分析要望が出てきたときの進め方も決めておきます。誰が要件をまとめて、誰が作業を担当して、どれくらいの期間で完成させるか。こうした手順を明確にしておけば、新しい機能もスムーズに追加できます。
5. まとめ BIツール導入を成功させるポイント
ここまで、計画から運用まで4つのフェーズに沿って導入の流れを見てきました。
各フェーズで大切なのは、技術面だけでなく組織全体で取り組むことです。
「導入したが活用されない」という失敗を避けるため、以下の5つのポイントを押さえておきましょう。
- 1. 課題から始める: 技術ありきではなく、解決したい課題を明確にする
- 2. 要求を具体的に: 曖昧な要望を避け、具体的な要求を文章化する
- 3. 使う人を中心に: 実際のユーザーを早期から巻き込み、使いやすさを重視する
- 4. 適切なツール選び: 機能比較でなく、要求に基づいて選択する
- 5. 段階的に進める: すべてを一度に導入せず、小さな成功を積み重ねる
最初から完璧を求める必要はありません。現場の状況を踏まえ、無理なく始められる範囲から着手しましょう。
小さな成功を重ねることで、データ活用意識が組織に根付いていきます。
とはいえ、これらのポイントを自社だけで実践するのは簡単ではありません。
特に初めてのBI導入では、どこから手をつけていいか迷うことも多いでしょう。
そのような場合は、経験豊富なパートナーと一緒に進めることも有効な選択肢の一つです。
当社では、ツール診断から運用設計まで、現場視点を重視した支援を行っています。
ご興味のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。