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AI-OCRで始める業務効率化【IT導入補助金適用も可】

2025年4月22日

近年、ChatGPT等の台頭で生成AIが話題になっていますね。
文章作成・要約・企画の提案など、新しい情報を創出(生成)する生成AIは、幅広い領域でDXを加速させる存在です。
このことで、「AI」を身近に感じるようになった方も多いのではないでしょうか。

一方で、生成AIが広く使われ始めるよりも前に、多くの企業がDX推進の第一歩として取り入れていたAI活用技術があります。
それが「AI-OCR(AI技術を活用した文字認識技術)」です。

「どうしても紙で運用せざるを得ない業務があるが、そのせいで膨大なデータ入力という単純作業に日々追われている」
「紙運用の業務をデシタルシフトすることはできたが、紙時代の情報はデータ化されていないので理想のデータ活用ができない」

このような課題を抱える企業は少なくありません。

今回はその解決策となるAI-OCRに焦点を当て、具体的な事例や導入時における重要な検討ポイントをわかりやすく紹介していきます。

1. AI-OCRについて

AI-OCRとは?

AI-OCRは、従来のOCR(Optical Character Recognition: 光学文字認識。紙の書類やPDFなどのアナログ情報を読み取り、デジタルデータ化する)に、AI(人工知能)を組み合わせ、認識精度を大幅に向上させた技術です。

従来のOCRでは難しかった手書き文字やレイアウトの認識等まで可能になったことで本格的な業務適用が可能と判断され、すでに多くの企業で導入されています。
AI-OCRは今や一定の成熟をした、安心して業務に適用できる技術と言えるでしょう。

<AI-OCR読み取り前のアナログ情報と、読み取り後のデジタルデータのイメージ>

AI-OCR導入に期待できる効果

AI-OCR単独に注目した場合、紙帳票からの文字起こしが自動化されることで、次のような効果が期待できます。

作業時間の大幅短縮
クイックな対応・顧客満足度向上
要員不足・繁閑差の解消
要員の本来業務への集中

人為的な入力ミス防止
作業品質の向上
要員の作業ストレス・プレッシャー緩和

2. 利用イメージ

AI-OCRでアナログ情報をデジタル化するには、2つのステップがあります。
(世の中には様々なAI-OCRツール・サービスが存在しますが、大まかなステップは変わりません)

①読み取り設定

  • 読み取り対象の帳票からどのようにデジタルデータを取得するかの設定をします。
  • 対象の帳票やデータの利用方法などに応じて、以下のうちから適切な設定をすることになります。
設定の種類利用シーン
(1)帳票の「どの範囲から、どんな情報を読み取るか」を逐一定義する
固定フォーマットの帳票から、業務処理に必要なデータを高精度で取得したい
(2)AI-OCRツール・サービスの自動項目判定を利用する
書式がバラバラの同種の帳票から、業務処理に必要なデータを取得したい
(3)文書全体を横断的に読み取る アーカイブとしての検索性をもたせたい

※画像は DX-Suite 系弊社製品Like eyesでの設定イメージです。

②読み取り実行

  • 読み取りたい帳票をPDF形式または画像形式で用意し、①の設定を利用して読み取りを実行します。
  • 例えば①で(1)の設定を行った場合、以下のように、記入項目名と記入内容が対応付けられたデータを取得できます。

このように、目的に応じた読み取り設定を一度すれば、以降は読み取りたい帳票をAI-OCR処理にかけるだけで手間なくデジタルデータが手に入るようになります。

なお、読み取りに掛かる時間は読み取る内容・量にもよりますが、人の手で作業をするよりも格段に速いことは間違いありません。
例えば人が5分かけてエクセルに入力していた内容を、AI-OCRではわずか1秒でデータ化できてしまうことも珍しくありません。

3. 他ツールとの組み合わせが肝心

さて、ここまではAI-OCRでアナログ情報のデジタル化ができることと、具体的な利用イメージについてご説明してきました。

しかし、大抵の場合、AI-OCRを利用する本来の目的は単に情報をデジタル化することではなく、その後のデータ活用を行うことにあるでしょう。
実際、AI-OCRが担うのは「アナログ情報をデジタルデータに変える役割」=「データ活用の入口の役割」に過ぎません。

ただAI-OCRを導入するだけでは恩恵は限定的なものですが、その先には、以下のような可能性が広がります。

RPAなど処理の自動化手法と組み合わせると…

※RPA:Robotic Process Automation/パソコン上で行う定型作業をローコード開発で自動化する仕組み。詳しくは こちら

作業時間のさらなる短縮
手順・判断等のミス防止で業務品質を向上・均質化

BIツール(データの可視化ツール)や生成AIと組み合わせると…

データからの新たな情報獲得
意思決定の迅速化・高度化

このように、他の技術・ツールと組み合わせることで、本来もしくは本来以上の目的を達成することが可能になります。
具体的な例をいくつかご紹介します。

– 事例①
【AI-OCR×RPA】請求書処理の自動化で、繁閑差とヒューマンエラーを抑制

問題点 

  • 月末月初に残業が必要になるほど立て込む請求書業務
  • 企業ごとに異なるフォーマットで来る請求書情報を自社システムに入力するだけでも大変
  • ダブルチェックを行っても気が急いているためにミスを見逃してしまう


改善ポイント

  • AI-OCRとRPAを導入し、人が行うのは以下のみとした
    受領した請求書をスキャンして、AI-OCR処理を実行
    AI-OCR結果のうち、特定項目だけ念の為にチェック
    RPA処理を実行(自動処理で自社システムに登録・入金データ作成)
  • 自動処理のおかげで、企業ごとの個別対応へのミスもゼロになった
  • 人の作業時間を80%削減できたことで、残業がゼロになった

– 事例②
【AI-OCR×BIツール】請求情報の即時可視化と経営リスクの早期察知

問題点 

  • 事例①の処理後のExcel手作業での分析が手間
  • 報告までのリードタイムが長い
  • データの深堀りをしたい場合、依頼に基づき報告作成者が都度グラフを作成

改善ポイント

  • 事例①に加え、自社システムとBIツールを連携するようにした
  • AI-OCR結果をRPAで自社システムに登録した直後からリアルタイムで状況を確認できるようになった
    月に1度の報告を待たず、好きな時に最新の状況を確認できるようになった
    管理・フォローが容易になった
  • BIツールを用いて経営層が自由な切り口でデータを探索できるようになったことで、
    ある部材が特定の取引先に完全依存している状況を察知・リスク分散の施策を考えることができた

– 事例③
【AI-OCR×RPA】契約書のデータベース化で検索時間を大幅短縮

問題点 

  • 過去の契約書を参照したい時、契約書原本や契約書のPDFデータ格納フォルダから探すのに手間がかかる
  • テキスト検索できるPDF以外は、確認に必要な箇所を最初から読んで探すのに手間がかかる

改善ポイント

  • 契約書のAI-OCRでの全文読み取り結果を、RPAで契約管理システムに登録するようにした
  • 検索が容易になり、作業時間を短縮できるようになった

– 事例④
【AI-OCR×生成AI】アンケート結果の分析と改善提案

問題点 

  • 紙で回収したアンケートの回答を手作業で入力するのが大変
  • 自由記述欄については入力者の主観で内容を分類した結果で集計しており、人によって判断にバラつきがある
  • 改善提案を考えるのに時間がかかる

改善ポイント

  • AI-OCRで回答を読み取り、自由記述欄については自然言語処理と生成AIを用いて、感情分析・自動分類をするようにした
  • 定性評価をバラつきなく集計できるようになった
  • 作業時間を90%ほど削減でき、考察により時間をかけられるようになった
  • 提案の叩き台に生成AIを利用することで、正式案固めがスムーズになった

4. 導入時の4つのポイント

AI-OCRは有用な技術ですが、「便利そう」「使えそう」といった印象だけで導入を進めるのは危険です。
本当に効果が出るかどうかを見極めるためには、事前に押さえておくべきポイントがあります。
また、世の中には様々なAI-OCRツールが存在します。

ここでは、導入を成功させるための4つの検討ポイントをご紹介します。

– 検討ポイント①:業務実態の把握と導入対象の明確化

AI-OCRは、紙やPDFなどの書類から文字情報を読み取る技術です。導入前には、どんな書類を扱っていて、どのくらいの量があり、今どれだけの手間がかかっているかを整理することが大切です。

以下のような観点で、AI-OCR導入の必要性・有効性を見極めましょう。

  • 現状の棚卸(対象業務・プロセス、入力や確認にかかっている時間)
  • 帳票の量・種類(どれくらいの数・頻度で作業しているか)
  • 帳票の特性(定型 or 非定型、手書き or 活字)※

※後続の検討で使用

– 検討ポイント②:精度と機能の検証

AI-OCRは万能ではなく、ツールによって読み取り精度や使い勝手に違いがあります。実際の書類を使って試してみることで、自社の業務で使えるレベルかどうか、どこまで自動化できるかがわかります。

実業務に適用できるか、以下の観点で確認しましょう。

  • 記入内容の読み取り精度
  • 処理時間
  • 帳票種別の自動振り分け、辞書登録、学習機能の有無と有効性
  • 実業務への組み込みイメージ(事後の修正・確認作業の必要性、他処理との連携イメージ)

– 検討ポイント③:セキュリティ方針

帳票には個人情報や機密データが含まれることもあるため、データの取り扱いやセキュリティの確認は必須です。AI-OCRの提供形態にはクラウド型とオンプレミス型があり、機密性の高い情報を扱う場合はオンプレ型を、手軽に使い始めたい場合はクラウド型を選択するケースが多いです。

以下のような観点で、自社のセキュリティ要件や運用方針に合うツール・形態を見定めましょう。

  • 自社のセキュリティポリシーや業種特有の規制への対応
  • 社内のネットワーク環境や他システムとの連携可否
  • データの保存場所・通信経路の暗号化などの技術的要件

– 検討ポイント④:費用対効果

導入にかかる費用(初期費用・月額料金など)と、導入によって削減できる作業時間や人件費を比べて、投資効果を見極めましょう。費用対効果を数値で試算することで、社内の合意形成もしやすくなります。

以下を調査・試算し、導入要否や自社に最も合うツールの判断をしましょう。

  • 初期費用、基本月額/年額などの費用体系
  • 読み取りコストの算定方式(処理枚数、項目タイプ、項目数などの影響)の確認と実帳票での試算
  • 費用対効果の試算(上記と、年間で削減される工数・人件費との比較)

5. まとめ:AI-OCRで業務効率化・DX化のスタート地点に立とう!

今回はAI-OCRの基本知識からその後の活用についてまで、そして導入時のポイントと幅広くご案内しました。
本記事を通して、紙業務をデジタルシフトしきれないことにお悩みの企業様も、AI-OCRを交えた仕組み化を行えば業務効率化・DX化に取り組める!と希望を持っていただけましたら幸いです。

オルトロボでは、AI-OCRを利用して業務効率化・DX化を目指したい企業様をトータルにサポートいたします。

  • 貴社の用途に合ったAI-OCRツールの検証・選定
  • AI-OCR読み取り精度を高める設定の提案・実施
  • AI-OCR読み取り精度を高める新規帳票フォーマットの作成
  • 読み取り結果の利活用方法のご提案~実際の仕組みの構築

なお、AI-OCRは、このほど申請が受付開始となった IT導入補助金2025 の適用も可能となっています(条件あり)。

当社はこれまで100社以上の企業様の業務効率化・DX化を成功に導いた実績があり、また、申請のサポートも可能ですので、ぜひお気軽にご相談くださいませ。